今日は下剤を使っても便秘症の人、反対にお腹が緩くなる人必見!正しい下剤の使い方を伝授します。お腹が痛くなったり、便がゆるゆるになるのはあなたの症状に合ったものをチョイスしていないからです。日常的にで便秘と下痢の患者様の排便コントロールをしている現役看護師があなたのお腹を整えるお手伝いをさせていただきます!
緩下剤
読んで字のごとく、便を緩くするための薬です。うんちが固くなって出せないという方向けです。便が固くなるのは水分が失われてしまうために起こります。水を飲む量が少なかったり、何度も便意を我慢していると腸内に便が留まる時間が長くなり水分が吸収されてカチカチのうんちになってしまいます。無理やり排泄すると、肛門部が痛くなったり、肛門周囲が切れたりする原因にもなります。
緩下剤にはいくつか種類がありますので順番に見ていきましょう。
①塩類下剤
病院でも最もポピュラーな緩下剤です。もしあなたが病院で「お通じが固くて出すときに痛みがあります、便秘気味なんです」と言えばほとんどの医者はこの種類の薬を出します。酸化マグネシウムと呼ばれるもので、病院では「カマグ」と呼ばれるものです。
作用機序はいたって簡単です。この薬の成分はは腸で吸収されにくく腸内の浸透圧を高めます。体内の水は浸透圧の高い方に移動していくようになっているため、腸内に水分が移動し、便に水分が含まれてカチカチのうんちからソフトなうんちに変身させてくれます。内服時は水分を多めにとるとより効果的です。
なぜ、この薬が病院で最も選ばれるのかというと、効果はさほど強くありませんが、副作用や依存性がなく初心者でも調整しやすい薬だからです。例えば朝夕食後に2錠飲んでいて下痢になったとなれば、1錠ずつにしてみたり、朝は飲まずにしてみたりと自分でコントロールできます。市販薬であれば「酸化マグネシウムE便秘薬」などです。手ピカジェルで有名な健栄製薬さんから発売されています
②膨張性下剤
病院でもあまり使われることはありません。大概は①番とこれから紹介する刺激性の下剤を組み合わせて排便コントロールしていきます
作用機序は腸管内でこの薬の成分は吸収されず、服用した水や腸管内の水分を吸収して便を大きくします。便がある程度の大きさになると腸壁を刺激し腸蠕動が活発になり肛門部まで運ばれ、排泄するという仕組みです。通常、12~24時間以内に効果が現れますが、2~3日連続して服用するとより効果的です。
③浸潤性下剤
便の表面張力を低下させて便中に水分を浸透させ、便を柔らかくすることで排便しやすくする薬です。副作用がなく、クセにもなりにくいという特徴がありますが、①と②の下剤と比べて作用が弱い
①~③で共通していることは、作用機序に違いはあれど、緩下剤とは
カチカチうんちに水を含ませて柔らかくする
ということです。
内服の自己調整の落とし穴
ちなみに、①の薬が一番有名で自分で減量調節できると記載しましたが、便秘が解消されないからと処方してくれた医師の指示や、市販薬の指定された用法用量以上の内服は止めましょう。
用法容量を守らず、大量の酸化マグネシウム錠を内服すると、高マグネシウム血症などで体液バランスが狂い電解質異常をきたします。
難しく書いていますが、簡単に言うと体の中の水分やNa、K、Mgなどの体液バランスが崩れて気分悪くなったり体調不良を起こすということです。
マグミット錠基本情報: https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/23/2344009F2031.html
刺激性下剤
便に働きかけるのではなく、腸の動きを促進させ、うんちを排泄させるのを助ける薬です。
これは、小腸と大腸の2種類あるのですが、小腸に働きかけのあるものはヒマシ油です。今回はメジャーな大腸に関連するものを上げていこうと思います。
①アントラキノン系
医療機関でよく用いられる刺激性の下剤です。有名なものでセンノサイド錠(センノシド)があります。これは市販でも売っています。代表的なものは大正製薬から販売されている、コーラックハーブです。
胃や小腸では作用しません。大腸の腸内細菌によって分解されて作られたアントラキノンが大腸の粘膜を直接刺激もしくは腸管壁の神経を刺激することによって蠕動運動を活発にして、排便を促します。腸蠕動とは腸が肛門側に便を押し出そうとする動きのことです。
②ジフェニルメタン化合物
大腸の細菌がもつ酵素によって分解された物質が大腸の蠕動運動を亢進させて排便を促し、大腸での水分吸収を抑制することで便を柔らかくして排便を促進します。
病院ではピコスルファートナトリウムと呼ばれるシロップ上のものが主流です。
市販では佐藤製薬から錠剤でピコラックスとして出ています。
種類はあれど、刺激性下剤の働きは
腸を刺激して肛門側に便をもっていく
ということです。
刺激性下剤の落とし穴
刺激性の下剤は、緩下剤系よりも効果は高いです。しかし、効果が強いということは、副作用である腹痛や下痢を起こすことがあります。また、腸蠕動を助ける働きがあり依存しやすい薬でもあります。(体は楽な方を選ぶため)自分で動かさなくても薬が動かしてくれると体が学習してしまえば腸蠕動の活動は弱くなっていくので、使うときは注意が必要です。
そして、内服するときは寝る前または、夕食後に!腸蠕動が活発になるのは寝ている間(副交感神経優位になっている時)なため、蠕動運動の刺激を与える薬は必ず夜に内服しましょう、その方が高い効果を得ることができます
浣腸
病院では内服で全く反応がなかった時、手術前など強制的に排便させる時に使います。しかし、世の中には飲み薬には負けず、かたくなに腸内に留まるうんちに悩まされている人もいます。
病院ではグリセリン浣腸、通称「グ浣orGE」と呼ばれるものが多いです。
浣腸は肛門から薬液を直接注入し、直腸粘膜に刺激を与えることで腸管の蠕動運動を亢進させて排便を促します。グリセリンには吸収性があり、直腸内に注入すると腸管壁の水分を吸収することによる刺激作用で腸管の蠕動運動を亢進させます。また、便を柔らかくするとともに潤滑性を良くすることで便を排泄させます。
市販薬ではイチジク製薬から出ている、イチジク浣腸が有名です。
これは一般の人でも直腸を傷つけるリスクの少ない長さで販売されていますのでちょっと勇気はいりますが誰でも浣腸ができます。
薬局で買うのはちょっと抵抗が…という乙女も多いと思います。私は買ったことはないですが、コンドームを買いに行くより浣腸を買いに行くほうが恥ずかしいです。特に男性の店員さんだと「oh no!」と心の中で叫びますね。そんな時はAmazonや楽天で買ってしまいましょう!
買いだめしておくと、便秘が習慣化している人には非常に心強いですね。使用期限も保存方法を守ればそれなりにあるので、多めに買っておいても不自由はしないかと思います。
浣腸時の注意
医療現場であれば浣腸は新人看護師は先輩看護師から「一人で実施しても良い」と判断してもらうまでひとりでは行えません。
理由は、直腸内に異物を挿入したときや大量の排便により迷走神経反射が起こり血圧が低下する恐れがある。また、浣腸挿入時に直腸穿孔をする恐れがある為です。
イチジク製薬から販売されている浣腸は挿入の長さが短く直腸穿孔のリスクは限りなく少ないです。
しかし、直腸穿孔のリスクは少なくても、血圧低下のリスクはあります。長い間便秘が続き浣腸により大量に排便があったときは血圧低下に注意です。体調がすぐれない時はお勧めしません。
便秘の定義や種類については以下の記事で詳しく書いていますので、参考にしてください。
便秘知らずの人はみんな知っている、便秘のタイプを知って正しく腸内環境を改善しよう
正しい下剤の使い方
①まずは生活習慣や食事をととのえましょう
②それでも改善が見られなければまずは自分のうんちの状態を観察
③カチカチうんちなら緩下剤を使用
④おならの量が減っている、とても臭いなど腸内にたまっているものが多い時は刺激性の下剤を考慮。1日目センノシド→2日目ピコラックスで使うとほとんどの患者様は3日目には排便できています。
今日のオナラは殺人級!? 腸内環境の信号機!オナラの臭いで分かる腸内環境
⑤それでも出ない、出し切れない時は浣腸を…それと同時に消化器内科に行ってみるのも良いですね。便秘でいていいことは一つもありませんから
入院患者の排便コントロール
病院で実際に便秘症の患者さんの排便コントロールをするときのメジャーなルーティンは以下です
- 食事摂取、水分摂取を促し、運動や腹部マッサージを実施してもらう
- 便が固い場合は、酸化マグネシウムで便を柔らかくする(これで排便がコンスタントにできれば緩下剤のみ使用)
- 酸化マグネシウムを使っても出ない、すっきりしないときはセンノシドなどアントラキノン系の下剤を使用
- それでもでなければ、ピコスルファートナトリウム系を使用(ここで大多数の患者さんは出ます)
- 最終手段、浣腸(これで出なければ肛門に指を突っ込んで直接ウンコを掻き出します)
まとめ
- 便秘対策の第一選択肢は、食事と運動療法
- それでもでなければ、まずは緩下剤を使用
- 緩下剤じゃすっきりしなければ刺激性の便秘薬を使用
- それでもだめなら浣腸
- 刺激性の便秘薬、浣腸は癖になりやすく、腸の働きをなまけさせてしまうので最終手段という気持ちで使う
- 用法容量を守る
- ウンコが大量に出ると、血圧が下がることがあるため体調に注意する
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